読書偏食家

本をジャケ買いするみたいにして選びたい

『ラブレター』 岩井俊二

 

ラヴレター 角川文庫

ラヴレター 角川文庫

 

 

 中学時代に読んだもの、ふと読みたくて読んでみました。

あの時は、いい!こんな本が読みたかった!といたく感動した記憶があるのですが…

今読んでみると、はて…なぜ感動したのか…これは苦行でしかないじゃないか…と。複雑な気持ちになりました。

 

部活と読書しかしなかった中学生の私に、愛する人を想う気持ちは分からなかったんだなあと苦笑するばかりです。卒アルで見つけた住所に手紙を送ってみるというワクワクに酔いしれただけだったんだろうな〜。

 

主人公は亡くなった婚約者の過去を不思議な糸で手繰りよせていきます。

亡くなってしまった愛する人と、思いもよらず接点が増えることへの喜び、

でも、徐々に感じ始める虚無感(…悲しみなのか?)。

苦しくても、愛する人の全ては知りたいもの、

もう会えない人ならばなおさら…

でも、そこにある現実は決して自分を喜ばせるものだけはなくて。

あーーー

愛する人の過去は愛しくて、それと同じくらい憎いものなんだなーーー

と心がヒリヒリしました。

 

そんな、軽く言えば恋愛あるある、重く言えば真理、を、有形なものにした本作は、

映画化されるのもずっとファンがいるのも納得だな〜と思います。

 

焦点はきっと、その恋愛あるあるじゃなくて、

過去の恋愛から一歩前に進もうとする主人公にあるんだと思いますけど。あまりその点は響かなかった。

 

 



 

 

『星間商事株式会社社史編纂室』 三浦しをん

 

星間商事株式会社社史編纂室 (ちくま文庫)

星間商事株式会社社史編纂室 (ちくま文庫)

 

 アマゾンの評価はそこまで高くないですがね〜、私にとっては面白くて、創作そして文字に起こすことへの畏敬と感謝(大げさ!)を感じました。さらに三浦さんが好きになったわ〜♡

 

思いつくものを文字にできる人、すごい。そして羨ましい!!!同人だからなんて卑下する理由がわからない…表現する方法を知らず、ただ自分の求めるものを見つけ出し選び、それを享受することでしか満足できない自分がもどかしく思います。

ま、要は小説大好きってこと。

 

さて、本作は、

同人誌作製を趣味にし、その趣味を続けるためにそれなりに仕事をし、それなりに恋人と付き合い…うまく?過ごしていたアラサー女性が主人公。

会社の秘密に気づき、仕事に恋に趣味に友情に、これまでの安穏とした生活がめまぐるしく動き出します。

 

アラサーなら誰でも悩む人生のターニングポイントなんだけど、主人公の芯の太さが格好よくて惚れそう。

 

話の随所に散りばめられた社会のシニカルさというかアンチテーゼ(とまでは言い過ぎか)というか、が、爽快で、リズム良く(三浦さんのいいところ!)。

結果、「ものを書ける」ということへの畏敬を感じざるを得ませんでした。。

んま、ちょっと総務の過去については尻すぼみ感はあるんだけど、あんま気にならない。

 

腐女子要素があるので、苦手な人もいるし男性受けははてなと思うとおすすめはしないけれど、個人的にはすごくヒットでした( ¨̮ )

登場人物も相変わらず愛嬌があって愛おしい♡

 

一気に読んでしまったので、お酒を飲みながらじっくり読み返したい気分。

 

 

『ロマンス小説の七日間』 三浦しをん

 

 海外ロマンス小説の翻訳家の主人公と、突然会社を辞めてきた彼氏の、

ちょっとしたすれ違いの七日間の話。

ってまとめちゃうと毒にも薬にもならない感満載だけど、

翻訳中のロマンス小説が同時進行で出てきて、しかも主人公の心のもやもやを表すように超訳…を飛び越えて創作されていって、

斬新で面白かったです( ¨̮ )♪

 

登場するキャラもそれぞれいい味出してました、特にお父さん。三浦しをんさんの小説に出てくる人たちって、なんだかみんな愛おしいキャラだなー。

 

読み終わってみて、ハーレクインを無性に読んでみたくなりました。ただ甘いだけの小説なんて…って毛嫌いしてきたけど、客観的に読めたらなんかすごくストレス解消になりそう!!

 

実世界とロマンス小説がもっと交錯していっても良かったなー!

 

『本日は大安なり』 辻村深月

 

本日は大安なり (角川文庫)

本日は大安なり (角川文庫)

 

 

大安というお日柄の良い日にある結婚式場で挙式予定の4カップルのお話。

同じ日に4件も!という忙しい日の目まぐるしさ、

カップルそれぞれの持つ悩み、でも幸せになろうとしてもがいている愛らしさ、

他人事なんだけどどーーしても感動して幸せを願わずにはいられない結婚式という魔法、

そんなバタバタ、ワクワク、キラキラが詰まった素敵な小説でした。

 

け、ど、

どーーーしても許せない1カップルの新郎がいまして。

いやいやいやないでしょ、許せないでしょ、

なんで最後幸せになってんのよ!!

イラっとしました。

白いワンピースにこぼした醤油みたいな許せなさ。

ハッピーエンドにすりゃいいってもんじゃないでしょ、、

素敵な小説だったために残念です。

 

『星やどりの声』 朝井リョウ

 

星やどりの声 (角川文庫)

星やどりの声 (角川文庫)

 

 朝井リョウさん初めて読みました。もっと早くに読むべきだった〜(*´ω`*)

 

父亡き後、6人兄弟と母の家庭に起きるひとつの事件というか…ターニングポイントの話し。

兄弟それぞれの視点で章立てられてストーリーが進んでいきます。兄弟ひとりひとりの個性できちんと書き分けられていて、でも両親への思いという…連綿と続くというか一本通っているというか…ものがあって、

ものすごく微笑ましくて、愛おしい。

 

ひとつの区切りというものは、寂しいこともあるけど、未来への希望でもあるんだなーと思わせてくれる作品でした。

 

それにしても、最後で一気に謎解きモードになるのには、当初の「温かい家族の物語」という期待にワクワク感がプラスされて、いい意味で裏切られました。

あ、あれ伏線だったの?!ってミステリーでもないのに思わされて、嬉しい悔しさ。

星の神秘性も加わって、なんて言うんだろう…温度感のある?立体感のある?そんな小説でした٩( 'ω' )و