読書偏食家

本をジャケ買いするみたいにして選びたい

『四月一日亭ものがたり』 加藤元

 

([か]10-1)四月一日亭ものがたり (ポプラ文庫)

([か]10-1)四月一日亭ものがたり (ポプラ文庫)

 

 ふらりと寄った本屋さんの、「食欲の秋特集」で見かけた本!

 四月一日亭という洋食屋さんを舞台にした連作短編で、設定は大正時代。貧しさや世の激動に翻弄されながらも一生懸命に、強く生きる人たちの姿が鮮やかに描かれています。

 

 章立てのタイトルはひとりひとりに因んだ四月一日亭のメニュー。

  あまりその料理の描写は無く、付随する記憶がほろほろと綴られるというかんじ。読み応えはあるんだけど、美味しい匂いを期待していたのでそこは少し物足りなかったなー。

 

『ふたりの文化祭』 藤野恵美

 

ふたりの文化祭

ふたりの文化祭

 

 藤野恵美さんの本を何気なく2冊借りてきたら、2冊とも同じ高校が舞台でびっくりしました。こーゆうのって、嬉しい(*´ω`*)

  高校1年生の、文化祭のお話し。

爽やかバスケ部イケメンと、物静かで本が大好きな図書委員女子

2人の文化祭準備から当日までの変化と軌跡。

 

 残念なのは、文化祭当日の部分が急ぎ足感があるところ。あれやこれやと急激にいろいろなことが起こりますが、そのことへのショックがあまり無く不自然。

 サクサクと描き進められ、チャカチャカと主人公2人の気持ちに大きな変化が起き、

え、、、っと、なんでかな??みたいな。

壮絶な置いてけぼり感。

 伏線はあったから理解はできるけど、気持ちの変化をもう少しじっくり表現して欲しかった。強引過ぎる。

 

 良かったのは、「わたしの恋人」もそうだったけど、親子関係の悩みをものすごくストレートに分かりやすく、恐れず描くところ。

そして、親は親、子は子だよ、という自立心と自尊心を奮い立たせ、厳しく温かく縮れた気持ちや伸びきったプライドを

それは例えばピザ生地をこねて成形していくみたいなかんじに

まるくまるく整えてくれる、ところ。よかった。

 

この作品には不満があるけど、

藤野恵美さんはとても良いなと思いました。もっと読もう٩( 'ω' )و 

 

『わたしの恋人』 藤野恵美

 

わたしの恋人 (角川文庫)

わたしの恋人 (角川文庫)

 

 初めて人を好きになり初めて付き合う高校生の話。

同時に、親のことで悩み、家庭や個人の問題に恋人として友人としてどう関わるか…という綺麗事だけでは済まないリアリティのあるストーリーになっています。

 

言葉はサラサラと流れるように自然で素直で心地良く、

この二つのテーマが「愛する」という気持ちを立体的にさせていて、

この本を自分が高校生のときに読めたらなあ…とちょっと悔しくなりました。

 

あーなんか心が洗われた!

『ロマンシエ』 原田マハ

 

ロマンシエ

ロマンシエ

 

 昨年12月に東京駅のステーションギャラリーで本作と連動した展覧会が開かれていたそうな…!過去と現在(未来)、フィクションとリアルの境目を繫ぎとめて無にしてしまうパワー、技術、なんかとっても原田マハさんっぽい。

 

 小説はというと。

これでもか!っていうくらい盛大なノリとテンションで畳み掛けてくるので、疲れました。最初はいちいち笑いながら読んでいましたが、途中から、まさかこのまま行く気ですか…ってうんざりした気分になり。

そのくせ、クライマックスの失速感とテンション低下(良く言えば「落ち着き」)は尻すぼみ感というザラザラを残し…。

 

とは言え、総じて良かったな〜と思わせるのは、

やっぱりマハさんの芸術への愛情と知識が、しっかりしたストーリーの土台を作っていたから、だと思います。

 

マハさんの作品にある、前を向かせる力強さは健在、

リアルへの挑戦という面白さもあり、

やはり今回もマハさん好きだな〜と思わずにはいられませんでした。

 

『秘密の花園』 三浦しをん

 

秘密の花園 (新潮文庫)

秘密の花園 (新潮文庫)

 

 ほー、こんなのも書くのかぁ、というのが第一印象。 

三浦しをんさんの一般的なイメージとはちょっと違う雰囲気の作品。

ヨコフタではないけれど、まったく同じようなミッションスクールで中高を過ごした私にはとても馴染みやすい作品でした。

 

思春期の少女の刹那思考を題材にした小説ってたくさんあって、読むたびにそんなもんだったかなあ…と腑に落ちないことがあります。それは作者の、少女への幻想でしょー、って冷ややかな気分にさせられることも。

 

でも本作は、割とリアルだったかなと思います。あぁ、そんなだったかな、と納得するところもしばしば。思い返すだけでも恥ずかしいような感情、だから、年月を経てもっともっと形ない曖昧なものになってしまった感情を、

三浦しをんさんはよく言葉にしていったなぁと。

ま、ノアの箱舟とかパンドラの箱の話が出てくるあたり、少し高潔すぎるのでは…という感が否めないですが。

 

性に悩み、恋に憧れ、友人を羨み、友人を愛し、自分を卑下し、

エスカレートしていって、

性を憎み、盲目な恋に走り、友人に嫉妬し、友人を疑い、自分を罵り、

全部が矛盾しながらも存在していて、はち切れんばかりに膨らみ続けて、

アンバランスで、

さらに勉強やら親やらのことがそのぷっくり膨れた風船の上に落ちてきて。

 

本作の3人とどんぴしゃで同じ気持ちってわけではないですが、3人の気持ちに似たものそれぞれを、女性たちは少女時代に経験してるのではないかな〜と感じました。

 

三浦しをんさんのボリューム感を求めて読むと、これじゃない感を感じる人はいるかもしれません。

少女性を表現する本としては、良かった!