読書偏食家

本をジャケ買いするみたいにして選びたい

『放課後』 東野圭吾

放課後 (講談社文庫)

放課後 (講談社文庫)


ガリレオシリーズ以来久しぶりに読んだ東野圭吾さん。
率直な感想は、楽しかった、けど、怖かった!人をいつの間にか傷つけているかもしれない恐怖が最後の章まで付いてくるので…。

引かれた伏線はとても分かりやすいんだけど、肝心の犯人はとなるとなかなか確信が持てないストーリー運びだったので、目を離せなくて夢中で読めました。
そして舞台は高校、と。好きな要素たっぷり!

大丈夫、そんな理由で人を殺めるほど、思春期の女性は、女子校は、繊細じゃないよ!!
とは思いつつ、
んーやっぱり子どもから大人になる時期の女の子はこんなもんだったかもなあと
読んだ翌日にふと感じました。
実はこの本、中学の時に1階読んでいるのですが、
すごく楽しかった!!!!という記憶があります。ストーリーはすっかり忘れてたけど。今回感じたような感慨は無かったなー。
ということは、きっと、するりと作中の女子高生たちに共感しながら読んでいたんでしょうね。


『恋の聖地-そこは、最後の恋に出会う場所-』 原田マハ他


観光地によくある、「恋人の聖地」を舞台にした短編が収録されたアンソロジー。

素直じゃない私は、恋人の聖地なんて、どーせ人集めのための取って付けたやつでしょーーーと思ってしまいますが。
なんだか、この本を読むと、
その土地の持つエネルギーに何か名前をつけようとした時に、「恋人の聖地」と名付けられるのかなーと思いました。
まぁ、その名付けは安直過ぎるんだけれど。

恋の聖地というテーマだから、恋愛ど真ん中!なのかというとそうではなくて、
良かったです。

終わった恋にケジメをつける話、恋が始まるかもしれない話、肉親の昔の恋の話、
それぞれの恋の話の中に、確固たる愛があって、ぽっと心が温まりました。


旅行に行く時に持って行くと、いいかも。旅先で貰えるパワーに敏感になれそうな気がする。

『生きるぼくら』 原田マハ

生きるぼくら (徳間文庫)

生きるぼくら (徳間文庫)



11月末から忙しくしていたので、
ものすごーーーーく久しぶりに本読めました。
本を読む時間、作らないとな
やはり読書は幸せだ!☆


友人から、「古本屋に売るには惜しいからあげる」というなんともセンスある一言とともに譲り受けた本。
タイトルが重たくて、なんとなく読んでいなかった、原田マハさんの本。

いつも通り、じわりと温かい気持ちになっては何度も涙を拭き、
読み終わった後にほぅ…と元気になっていく心を実感しました。

が、こんなに人間うまくはいかないのよ。という冷めた一言を投げつけたくもなりました。

以下はネタバレになるので要注意↓


このストーリーの主たるスポットは、人と自然との関わりの中で自分を見つけ出して生きる力を得ていく主人公にあります。
だから、この主人公を描くタッチはすごくいい。勢いも、リアリティも、すごく生き生きとしていて。

でも、周り、というか、おばあちゃんです。おばあちゃんの描写は、上手く行き過ぎていて良くないように感じます。
認知症、そんなに甘くない。
認知症の症状は本当に人によるから、こんな奇跡的な方もいらっしゃるんでしょうけれど、
祖父母が認知症だった私の経験から言うと、生温すぎます。
進行の速度を緩めることはできても、進行したものを戻すことはできない病気だと言われているし、
実際にそうだと思います。

なのに、なによ!
孫が分からなかったのに、話もできなかったのに、目も虚ろだったのに、
最後には孫を把握して普通にお喋りして冗談まで言ってんじゃん!


…とまあ、
先に言ったようにあくまでメインテーマではないので…
おばあちゃんの認知症は、設定上のピンチを作り出す材料でしかないので、目くじら立てても仕方ないとは思います。


なので、総じて、
力がみなぎってくる、いい小説だと思います。
それに、とってもお米を食べるのが愛おしくなります。美味しくなります。


『廃墟建築士』 三崎亜記

廃墟建築士

廃墟建築士


疲れたぁー、けど、面白かった!

タイトルの『廃墟建築士』を含めた4作品が収まっています。
あ、日常のあんな一コマから着想を得たのかな、、と明らかに思う部分がそれぞれにあって、
その一コマからこんなに世界が広がるのかあああ…ってしみじみ作家の凄さを感じます、というか三崎亜記さん独特の世界なんだろーけど。


もし、現実の世界がひとつひとつのタイルを敷き詰めたものであったとしたら、
そしてそのタイルの継ぎ目に隙間ができていて、ぺらりと剥がれるとしたら、
1枚そっとめくってみる。

そんな空想を昔からよくします。
三崎亜記さんの世界ってそんなかんじ!

普段と変わらない日常、
だけど剥がしたタイル1枚分だけ、世界は変わってる。

それが、緻密な設定と平然とした語りによって圧倒的な現実味を持っているので、もう現実かもしれない…って思ってしまいます。
だから、疲れるw

本作も、疲れました。
でも途中で放棄したくない、やっぱり面白かった!


『ギフト』 原田マハ

ギフト

ギフト


挿絵がはいっていて、1話あたり数ページという詩集のような本でした。
最後の初出ページを見て納得、雑誌やホームページ掲載のごくごく短い話ばかりを集めた短編集でした。

さっと空き時間に読める手軽さで、
ぽっと心が温まる話ばかりで、
言い方悪いけど、コスパがいい。

マハさんの本をたくさん読んでいたから、ああ、ここマハさんらしい!って思って楽しめたけど、
そうじゃなかったら誰の本か頭に残らなかったかも。
その点では特徴が鈍くてなんか惜しい本。