読書偏食家

本をジャケ買いするみたいにして選びたい

『ガラスの麒麟』 加納朋子

ガラスの麒麟 (講談社文庫)

ガラスの麒麟 (講談社文庫)


うーん。。
少し、腑抜け感のある小説でした。

通り魔殺人で亡くなった少女を巡るミステリーで、
多感な少女たちの心をそれは繊細に描かれているのはいい、面白い。
少し出来過ぎ…つまり、少女期の心がここまで詩的で刹那的なものだというのは、大人の幻想だよー   とは思うけれど、的を得ている感覚もある、うまい。
だけど、
それがミステリーの、この作品のスパイスになっているのかというと、そうでもないかな、というのが素直な感想。

面白くなるぞという期待感にスパイスが効いただけで、すっぽかされた。
「犯人」については散々に温め過ぎて、まるで濁った鏡のようによく分からない。

賞を受賞した作品みたいですが、あまり、私は、納得できないなー。

『桜の下で待っている』 彩瀬まる

 

 

 

桜の下で待っている

桜の下で待っている

 

 

 

 

 

北関東〜東北が舞台の短編小説。
やはり、彩瀬まるさんは心のもやもやを鮮やかに言葉にしてくれる!
 
家族に対して日頃抱いている、だけど、距離が近すぎてうまく表現できない、
分からなすぎて存在さえも殺してしまってるかもしれない、
そんなもやもやを、1つ切り出しては言葉にして置いていく、
そんなかんじ。
 
1話読んでは、ほーーーーっと長い呼吸をして同じようなことがうちでもあったな、どこで感じたんだったかな、って思いが巡る。
 
嫌なことだったり、どうでもいいことだったり。
 
家族って、距離が近いからこそイライラしたり甘えたり、人一倍何かと感じることが大きい存在。
家族との些細なことを抱えている人は、もしかしたら癒しになるかもしれないなーと思いました。
朝お母さんと喧嘩しちゃった、って人にぴったりな本かも。
 

『旅屋おかえり』 原田マハ

旅屋おかえり

旅屋おかえり


売れないタレントが偶然の出会いと周りの人脈で旅行代理人なる仕事を始める、というあらすじからして興味そそられる内容。

マハさんのしなやかな描写がするりと心に溶け、人情にあふれた面々とのやり取りに何度も涙する。心地よい小説でした。

タイトル通り、旅が一貫したテーマですが、旅を通した人とのつながり、家族を思う気持ちに焦点があります。
小説のテーマとしては、家族を思う気持ち、なーんてすごくありふれてるけど。
旅の景色の描写や町の成り立ちに思いを馳せながら読むから、温もりがあってよかったです。素直に(*´ω`*)


強いて言うなら、予想通りの展開過ぎて、ふと気持ちが冷めることがあって残念かな〜。
やっぱりじーんとくるんだけど、じーんとさせようとしてるよね?って思ってしまうというかね。。

タイトル的に、旅行に行く時に持つ本としてさくっと選んでしまいがちですが、
南国の浜辺でのんびり読むには向かない一冊だったかな…リゾート地のリラックス感と、主人公おかえりの旅程ぎっしり感が相入れないからかな?

『神様のケーキを頬ばるまで』 彩瀬まる

神様のケーキを頬ばるまで

神様のケーキを頬ばるまで


良い!
じわーっと染み入るような読後感、強い力をそっと吹き込んでくれるかんじ。
おすすめ!!と大声で言うには、少し控え目な文とストーリーなんだけど、そこも含めて好きだなー(*´ω`*)

連作短編で、ひとつのテナントビルに関わる人々の人生の一コマが描かれてます。
連作小説、大好き(`・ω・´)場面設定がブレないので入り込みやすいし、
同じもの同じ場所で、生きる人によってこんなにも違うのか…という人生の真理に近い何かに触れられる気がするから。

どのお話も、誰もが生きてれば行き当たる壁みたいなものに立ち向かうお話。といったらとてもストイックな小説に聞こえますが。
三者三様の飛びこえ方を見つけたところで話は終わります。

その終わり方が、前が明るくなる爽やかさを見た一方で、
さて、あなたは、どーするの?
というボールを投げかけられたように身に迫る。

あー気持ちよかった!すっきり!では終わらせない強さと厳しさがあって、
それが、最初に言ったじわーっと染み入る読後感と、吹き込まれる力の源なんだと思う。

がんばろう、じゃなくて、私なら何ができる?って自然体で前を向かせてくれる作品です。
なんだろー、テコっぽい。控え目に力を入れてきて、大きな作用になる。

彩瀬まるさんもっと読みたい!

『一分間だけ』 原田マハ

一分間だけ (宝島社文庫)

一分間だけ (宝島社文庫)


久しぶりに本読む時間ができたので、嬉しくて夢中で読める人の本を。

ペットがいる方にはたまらない一冊なんではないでしょうか…
時間に不規則な仕事に就く主人公が、恋人と別れてペットと2人になることで仕事に世話に奮闘し成長していく話。
というか、ペットがいることで自分を見失わずに、ぶれずに生きていく話、という方がしっくりくるかな〜。

お互いが寄り添って生きる姿に自然と涙がこみ上げてきました。

別れた恋人も、上司も部下も人間らしくていいキャラぞろいなところもすっと入ってきてよかった!

力強さより癒しを求めて読むのにぴったりな作品。