読書偏食家

本をジャケ買いするみたいにして選びたい

『あのひとは蜘蛛を潰せない』 彩瀬まる


あのひとは蜘蛛を潰せない

あのひとは蜘蛛を潰せない

 
28歳実家暮らしの女性が主人公。28歳という揺れる年頃、
でも揺れるのは結婚か仕事かじゃなくって、自分と母の関係性。
 
私はもう家を出て長いので少し違うけれど、
気持ちとしては母にべったり。そしてそのべったりとはひとえに愛情だけではないなにかで、時としてその「べったり」に生き方までも支配されているような恐れを感じます。
 
特に、私はイイコちゃんなので。
 
母は母、娘は娘
それぞれの人格とそれぞれの生き方があるんですよね。母のみならず親は心配という名の呪縛をよくするもの、それに応えようとするイイコちゃんはいつか潰れる。潰れなければそれは親離れしていないコドモなだけ。
成長するにつれて自我がはっきりしてくるんだもん、全てに応えていられない。
 
作中、母を気にするあまり花柄もスカートも着たことがなかったというシーンが出てきます。母があんたには似合わないと言うから、みっともないと言うから。初めて一人暮らしして、初めてふわりとしたスカートを買って。
私にも同じ記憶がある、一気に当時の気持ちが蘇りました。
恥ずかしいような、畏れ多いような、でも、嬉しかった。
 
母への思いってなかなか言葉にできないものだから、言葉として形のあるものになってごろごろしているととても痛快で、文字通り痛くて快い。
母の幸せを願いながら、母から独り立ちしていく娘、
不器用だけどしっかりしていて、勇気をくれる本でした。母との関係性に悩むアラサーの娘にどんぴしゃでオススメ。
 
作者は同じ86年生まれ。もっと他にも読んでみたい(*´ω`*)