『秘密の花園』 三浦しをん
ほー、こんなのも書くのかぁ、というのが第一印象。
三浦しをんさんの一般的なイメージとはちょっと違う雰囲気の作品。
ヨコフタではないけれど、まったく同じようなミッションスクールで中高を過ごした私にはとても馴染みやすい作品でした。
思春期の少女の刹那思考を題材にした小説ってたくさんあって、読むたびにそんなもんだったかなあ…と腑に落ちないことがあります。それは作者の、少女への幻想でしょー、って冷ややかな気分にさせられることも。
でも本作は、割とリアルだったかなと思います。あぁ、そんなだったかな、と納得するところもしばしば。思い返すだけでも恥ずかしいような感情、だから、年月を経てもっともっと形ない曖昧なものになってしまった感情を、
三浦しをんさんはよく言葉にしていったなぁと。
ま、ノアの箱舟とかパンドラの箱の話が出てくるあたり、少し高潔すぎるのでは…という感が否めないですが。
性に悩み、恋に憧れ、友人を羨み、友人を愛し、自分を卑下し、
エスカレートしていって、
性を憎み、盲目な恋に走り、友人に嫉妬し、友人を疑い、自分を罵り、
全部が矛盾しながらも存在していて、はち切れんばかりに膨らみ続けて、
アンバランスで、
さらに勉強やら親やらのことがそのぷっくり膨れた風船の上に落ちてきて。
本作の3人とどんぴしゃで同じ気持ちってわけではないですが、3人の気持ちに似たものそれぞれを、女性たちは少女時代に経験してるのではないかな〜と感じました。
三浦しをんさんのボリューム感を求めて読むと、これじゃない感を感じる人はいるかもしれません。
少女性を表現する本としては、良かった!
『ラブレター』 岩井俊二
中学時代に読んだもの、ふと読みたくて読んでみました。
あの時は、いい!こんな本が読みたかった!といたく感動した記憶があるのですが…
今読んでみると、はて…なぜ感動したのか…これは苦行でしかないじゃないか…と。複雑な気持ちになりました。
部活と読書しかしなかった中学生の私に、愛する人を想う気持ちは分からなかったんだなあと苦笑するばかりです。卒アルで見つけた住所に手紙を送ってみるというワクワクに酔いしれただけだったんだろうな〜。
主人公は亡くなった婚約者の過去を不思議な糸で手繰りよせていきます。
亡くなってしまった愛する人と、思いもよらず接点が増えることへの喜び、
でも、徐々に感じ始める虚無感(…悲しみなのか?)。
苦しくても、愛する人の全ては知りたいもの、
もう会えない人ならばなおさら…
でも、そこにある現実は決して自分を喜ばせるものだけはなくて。
あーーー
愛する人の過去は愛しくて、それと同じくらい憎いものなんだなーーー
と心がヒリヒリしました。
そんな、軽く言えば恋愛あるある、重く言えば真理、を、有形なものにした本作は、
映画化されるのもずっとファンがいるのも納得だな〜と思います。
焦点はきっと、その恋愛あるあるじゃなくて、
過去の恋愛から一歩前に進もうとする主人公にあるんだと思いますけど。あまりその点は響かなかった。
『星間商事株式会社社史編纂室』 三浦しをん
アマゾンの評価はそこまで高くないですがね〜、私にとっては面白くて、創作そして文字に起こすことへの畏敬と感謝(大げさ!)を感じました。さらに三浦さんが好きになったわ〜♡
思いつくものを文字にできる人、すごい。そして羨ましい!!!同人だからなんて卑下する理由がわからない…表現する方法を知らず、ただ自分の求めるものを見つけ出し選び、それを享受することでしか満足できない自分がもどかしく思います。
ま、要は小説大好きってこと。
さて、本作は、
同人誌作製を趣味にし、その趣味を続けるためにそれなりに仕事をし、それなりに恋人と付き合い…うまく?過ごしていたアラサー女性が主人公。
会社の秘密に気づき、仕事に恋に趣味に友情に、これまでの安穏とした生活がめまぐるしく動き出します。
アラサーなら誰でも悩む人生のターニングポイントなんだけど、主人公の芯の太さが格好よくて惚れそう。
話の随所に散りばめられた社会のシニカルさというかアンチテーゼ(とまでは言い過ぎか)というか、が、爽快で、リズム良く(三浦さんのいいところ!)。
結果、「ものを書ける」ということへの畏敬を感じざるを得ませんでした。。
んま、ちょっと総務の過去については尻すぼみ感はあるんだけど、あんま気にならない。
腐女子要素があるので、苦手な人もいるし男性受けははてなと思うとおすすめはしないけれど、個人的にはすごくヒットでした( ¨̮ )
登場人物も相変わらず愛嬌があって愛おしい♡
一気に読んでしまったので、お酒を飲みながらじっくり読み返したい気分。
『ロマンス小説の七日間』 三浦しをん
- 作者: 三浦しをん,こなみ詔子
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2003/11/22
- メディア: 文庫
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海外ロマンス小説の翻訳家の主人公と、突然会社を辞めてきた彼氏の、
ちょっとしたすれ違いの七日間の話。
ってまとめちゃうと毒にも薬にもならない感満載だけど、
翻訳中のロマンス小説が同時進行で出てきて、しかも主人公の心のもやもやを表すように超訳…を飛び越えて創作されていって、
斬新で面白かったです( ¨̮ )♪
登場するキャラもそれぞれいい味出してました、特にお父さん。三浦しをんさんの小説に出てくる人たちって、なんだかみんな愛おしいキャラだなー。
読み終わってみて、ハーレクインを無性に読んでみたくなりました。ただ甘いだけの小説なんて…って毛嫌いしてきたけど、客観的に読めたらなんかすごくストレス解消になりそう!!
実世界とロマンス小説がもっと交錯していっても良かったなー!
『本日は大安なり』 辻村深月
大安というお日柄の良い日にある結婚式場で挙式予定の4カップルのお話。
同じ日に4件も!という忙しい日の目まぐるしさ、
カップルそれぞれの持つ悩み、でも幸せになろうとしてもがいている愛らしさ、
他人事なんだけどどーーしても感動して幸せを願わずにはいられない結婚式という魔法、
そんなバタバタ、ワクワク、キラキラが詰まった素敵な小説でした。
け、ど、
どーーーしても許せない1カップルの新郎がいまして。
いやいやいやないでしょ、許せないでしょ、
なんで最後幸せになってんのよ!!
イラっとしました。
白いワンピースにこぼした醤油みたいな許せなさ。
ハッピーエンドにすりゃいいってもんじゃないでしょ、、
素敵な小説だったために残念です。