読書偏食家

本をジャケ買いするみたいにして選びたい

『星やどりの声』 朝井リョウ

 

星やどりの声 (角川文庫)

星やどりの声 (角川文庫)

 

 朝井リョウさん初めて読みました。もっと早くに読むべきだった〜(*´ω`*)

 

父亡き後、6人兄弟と母の家庭に起きるひとつの事件というか…ターニングポイントの話し。

兄弟それぞれの視点で章立てられてストーリーが進んでいきます。兄弟ひとりひとりの個性できちんと書き分けられていて、でも両親への思いという…連綿と続くというか一本通っているというか…ものがあって、

ものすごく微笑ましくて、愛おしい。

 

ひとつの区切りというものは、寂しいこともあるけど、未来への希望でもあるんだなーと思わせてくれる作品でした。

 

それにしても、最後で一気に謎解きモードになるのには、当初の「温かい家族の物語」という期待にワクワク感がプラスされて、いい意味で裏切られました。

あ、あれ伏線だったの?!ってミステリーでもないのに思わされて、嬉しい悔しさ。

星の神秘性も加わって、なんて言うんだろう…温度感のある?立体感のある?そんな小説でした٩( 'ω' )و 

 

『水やりはいつも深夜だけど』 窪美澄

水やりはいつも深夜だけど

水やりはいつも深夜だけど


順風満帆ではない人たち、でも諦めずに頑張っている人たちの話。
言葉にしにくいもどかしい日常に、ふっと空気を吹き込んで緩めてくれるような、読後感がありました。

爽快なストーリーではないけど、背中をぐいっと押されるわけではないけど、
控えめに差し延べられた手 とか、薄く開かれた扉(先は明るい光) とか、そんな存在を思わせる本でした。

なんて抽象的な感想。
でもそれぐらい、仄かだけどしっかりとした救いをくれる小説でした。
家族ってやっぱり家族、きちんと思い向き合うことで繋がれる。だから家族なんだなーと。

しかし
本当につまらないことに愚痴を言うようだけど、帯に連作小説って書いてあったのに、
同じ幼稚園に子どもを通わせる家々…とあったのに、
そんな風味ちっともなかったよ。
連作の絡み方のワクワク感が大好きな私には少し残念。

『星がひとつほしいとの祈り』 原田マハ

 

女性が主人公の短編集。

原田マハさんお得意の、心がじんっとしてうるっとくる話の詰め合わせ。
 
 
表題作は戦時中を強く生き抜いた女性の瑞々しく清らかな話で、表現も鮮明でよかった。この本は、この表題作だけでもおっけー。他は…例えば、キャリアウーマンで恋人は妻子持ちの上司、なんていうお決まりパターンなかんじ。常套過ぎて少し飽きるかな。
 

『旅のラゴス』 筒井康隆

旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)


本は専ら図書館で借りて読む派ですが、この本は買って手元に置いておくのもいいな、と思った数少ない本。いや、買いたい!って思った初めての本かも。

超自然的な能力がしれっと存在する世界でありその点はSFなんだけど、
なんだかそれが酷く自然で合理的な描き方で、
かつ、主人公が、完璧かよ!と突っ込みたくなるほどの理性と知性と倫理観のある人で。
そんな主人公が旅をしていろいろな人と触れ合ったり経験することで人間的な成長を重ねるところも読み応えあって。
そして最後に迎える静寂、それがひどく愛おしくて。

うーむ、こんなに地に足の着いた人間らしいSFもあるのかー、、と心底惚れ惚れしました。
筒井康隆さん、七瀬シリーズを中学生の時に読んで以来でしたが、もっともっと読みたくなりました。


頭が疲れた時に読むとSF感で頭がほぐれるし、
頭が元気な時に読むと想像と思考を刺激されるし、
旅行中に読むのも共鳴することがありそうでいい。
万能感!いい本に出会ったなあー♪



『同級生』 東野圭吾

同級生 (講談社文庫)

同級生 (講談社文庫)


東野圭吾さん、まだ読みたりないなーと思い、『放課後』に続き学校が舞台のものを。
『放課後』は教師の視点だったのに対して、こちらは生徒が主人公、しかも事件の当事者。

事件にまつわる人の感情というものはさまざまで、計り知れないものがあると思いますが
どうにもこの主人公は終始傍観者的だったかなあという気がします。しかも冒頭にある妹の話は、主人公はシスコンらしい…という先入観になりかねない伏線となり。
起こる事象は、高校生・恋愛・生徒指導・部活…なんていうワードで読者の気持ちがぐわりぐわりと持って行かれるに対して、主人公は冷静。しかもシスコン。

なんだかなーちぐはぐするなーというかんじでした。

でも、総じて思い返すと面白かったかな!